止血、凝固・線溶系のはたらき

血管が損傷を受けると出血します。出血が止まる過程を止血といい、血管収縮、血小板の形成、血液凝固の3つの過程を含みます。
まず、傷ついた血管壁の平滑筋が収縮して直径を小さくして流血量を少なくしますが、出血を完全に止めるには不十分です。そこで、血小板がその部位に付着して凝集し出血を防ぐために血栓を形成します。
さらに、血小板はセロトニンなど種々の因子を放出して血管を収縮させたり、血液凝固を促進したりして止血を助けます。

血液凝固の仕組みと過程
採血した血液は放置すると、数分から数十分で血餅をつくり血清が分離してきますが、これが血液凝固現象です。

血液凝固因子が関与する血液凝固経路には、内因性凝固経路と、外因性凝固経路があります。
内因性凝固経路は、血液中に含まれる凝固因子のみが反応する緩徐な過程で、異物面に触れた第Ⅶ因子が活性化されるところから始まり、最終的に第Ⅹ因子を活性化させます。内因性凝固経路では組織破壊を伴いません。
外因性凝固経路は、傷害された組織から流出した組織液中の組織トロンボプラスチンが血液凝固因子の作用によって同様に第Ⅹ因子を活性化します。
活性化第Ⅹ因子はカルシウム存在の下プロトロンビンをトロンビンに転化し、さらにトロンビンはフィブリノーゲンをフィブリンにします。フィブリンは重合し て不溶性になり、この編目に血球が詰まって凝固が完了します。血液凝固因子は通常不活性でありますが、出血によって活性化されます。

プロトロンビン、第Ⅷ因子、第Ⅳ因子、第Ⅹ因子は肝臓で産生されますが、その産生にビタミンKが必須です。これはビタミンKの存在に依存してそれぞれの因 子のグルタミン酸残基のγーカルボキシル化反応が起こり、形成されたγーカルボキシグルタミン酸残基が2価のカルシウムイオンをキレートするのに働くから です。


















出血傾向
出血は血小板減少など血管内の因子だけではなく血管外の因子や血管因子などがくみ合わさって起こります。
血管外の因子では、血管を取り囲む組織が柔らかで粗であれば出血しやすくなります。血管因子については、ビタミンC不足の壊血病では血管壁のコラーゲン強度が低下して出血傾向が見られます。
また、血管内の因子については、ヘパリンでプロトロンビンからトロンビンへの活性化を阻害したり、ビタミンK拮抗剤であるジクマロールで肝臓におけるγカルボキシル化反応を阻害したりすると、血液凝固は阻止または遅延される事になります。

線溶系
血管壁の出血部位に存在する凝血塊はやがて溶解されますが、これを線維素溶解現象といいます。血液凝固による止血が完了しますと、血液中に不活性の状態で 存在するプラスミノーゲンが血液や組織に存在するプラスミノーゲンアクチベーターによってプラスミンになります。プラスミンは一種のタンパク質分解酵素 で、不溶化したフィブリンを分解し、凝血塊も溶解されることになります。
線溶は、凝固によりフィブリン血栓ができた後でのみ起こるように制御されていますが、その制御に重要な役割を果たしているのがα2ープラスミンインヒビターと組織のプラスミノーゲンアクチベーターを阻害するプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1です。
最近、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1が脂肪細胞で産生されるアディポサイトカインの一つであることが明らかになり、肥満により血栓形成傾向が出現する理由とも考えられています。


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